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デザイン事例2:

2011年05月02日 23:33

次にご紹介する事例は、(株)オプナスのセキュリティ機器です。

opnus_kizon
(株)オプナスウェブサイトより引用

セキュリティというと幅広くなりますけど、基本的に機械加工部品の錠前が主な商品です
銀行の金庫の鍵から始まり、自動販売機の鍵などを経てオフィス機器や建材業界に進出し
たびたびワールドビジネスサテライトのトレたまに取り上げられるなど、
新しい価値を持つ商品を提案している気鋭のメーカーです。

現状では、建材部品であるドアの、そのまた一部の部品である錠前は、
最終商品でないためにエンドユーザーが選べる機会がなく、一生懸命データやマーケット分析をして
アイデアを盛り込みデザインを施しても、ユーザーとの間にいるドアメーカー、ハウスメーカーに
なかなか価値が理解されません。
購入する人と使う人が違うからなのですが、こういうケースは日本の産業では非常に多くある事です。
企業の皆さんは自分の業界は特別で、コンシューマーの様になかなかうまくいかないんだよ!
と思われている事が多いのですが、何も特殊な話でもないんですね。(苦笑)

きっかけは、役員の方が馬場が担当していた中小企業大学校の研修に参加されて手法を体験していただき
考え方を理解していただいた所から始まり、社外企画会議形式で、月一のミーティングを重ねてきました。
当初から3X4デザインプログラムを使って企画をしています。
この手法がマッチした商材なのか企業規模なのかは不明ですが、面白い商品が次々と生まれました。

まずはサムターンのパタンテです。
patante

オプナス パタンテカタログより引用

セキュリティ業界もIT・電子化が進み、展示会に行けばモニターやカメラを出品する家電メーカーが並び、
鍵もカードキーや携帯電話の認証機能を使った電子キーなど10年で様相は大きくかわりました。
しかし電子化はシステムとして運用しなければ大きなメリットが出ず、デバイスも高価になりがちです。
加えて電気が切れた場合は機能できなくなります。今回の大震災でも計らずも実証されてしまいました…
鍵は安全の砦として機能しなければなりません。

オプナスの開発方針の重要なポイントは、電気が必要な部分とそうでない部分をしっかり区別し
基本的には機械部品で問題解決しようというスタンスです。
安易な電子化は競合企業との価格競争を呼び起こしますし、
鍵をかける行動の持つ意味や感触が損なわれてしまいます。

実際、エントランスで鍵が必要なマンションなどは二重に守られているようですが
それに油断して家の鍵をかけない人が増え、泥棒に入られてしまうケースが発生しました。
どんなに高機能化しても鍵をかけるのは人間。
一番の防犯はまずしっかり鍵をかけること、かけ忘れないことです。


そうしてデザイン開発をしたのがパタンテです。
当初、サムターン回しという荒っぽい空き巣を犯罪を防止するサムターン(もしくは防護器具)
という直球のモノ開発テーマだったのですが
その解決策として、デザイン段階で垂直に立っているノブを倒すアイデアが出てから
内鍵をかけるという行動を見つめて発想されるようになりました。

内鍵をかける場合の気持ちってなんでしょうね…

・鍵のかかる向きがどちらなのかわかりにくい。
(わかっていても家によって違う場合がある)
・夜戸締まりをする時に、玄関に行けば一目でわかるといい
・ノブを回すと指が痛い。


挙げてみると、防犯機能より毎日扱う器具として重要な項目が出てきました。

方向性が一目でわかる矢印スタイル。
通常はフラットで、使う時だけ起こすノブ。
ノブの感触が気持ちのよく、子供やお年寄りでも確実につかめる。

このように単純なサムターンがたくさんのセールスポイントのある商品になりました。
ここでもモノをモノとしてとらえない考えが重要なわけですね。

加えて、ネーミングとロゴデザインも行いました。
鍵の動きと操作音を表す楽しげなネーミングです。

yamablog4_3.jpg

これによってカタログやパッケージもすべてロゴが反映されるようになり、それまでとは
対外的コミュニケーションが大きく変化しました。
アルファベットの羅列や数字の品番でない名前をつけた事で、
作る方も注文する方も愛着の湧く商品となったんですね。
(その後、ほとんどの商品で名前が付くようになりました。)

ちなみにパタンテはグッドデザイン中小企業庁長官特別賞をいただきました。
グッドデザインの申請書類も審査員に伝わりやすく狙いを書くことができ、
できた形がシンプルでわかりやすい解決策になっていたからだと思います。

この商品が生まれた結果、それまでは取引先の窓口は調達部門だったのですが、面白いことを考えているね!と
開発や企画部門からさまざまな要望や依頼が来るようになったそうです。
これはいきなりコストの話でなく、企画やコンセプトの基となるユーザーの動向の話ができるため、
競合他社との価格競争ではない土俵を築けるようになりました。
売上数値だけではなく、企業の価値が向上したケースと言えそうです。


というわけで、これは多くの製造業へのヒントになる事例と思います。

次回は「あーそうだよね!」ということを形にした事例を紹介します!
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