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デザインの行方 14(道草編)

2012年05月10日 13:27

地方のものづくり、いか釣りロボットが絶好調の理由
5月6日の「NHKニュースおはよう日本」で興味ある特集をみました。日曜朝の番組ですからご覧になった方も多いと思います。函館は株式会社東和電機製作所さんが製造する“イカ釣りロボット”が、中国の大型いか釣り船に搭載され大活躍です。

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株式会社東和電機製作所/製品情報/自動イカ釣り器より

職人技を機械で再現し、売れる背景までデザイン!
秘密は、日本のベテラン漁師が使う“シャクリ技”を、ロボットの巻き上げ機構に再現し、見事に機械がイカを釣り、中国に売れ行き絶好調!しかも機械屋さんなのに、中国がたくさん釣ったイカを受け入れて、“さきいか”に加工して中国に戻し、“イカの消費市場をつくりながら、イカ釣りロボットが必要になる状況をデザインする”モノが必要になる状況をデザインしたのです。ちなみに、日本ではおじさんの定番つまみ「さきいか」を、中国の若い女性がカラオケショップで、「栄養があって美味しい」と言いながら、トレンド食品のように、美味しそうに食べている画像が紹介されていました。イカは中国では高級食材だったんですね。

反面、事業可能性調査の結果は・・・
何故、この番組が気になったかと言うと、実はクルーで、10年前にA県から委託を受けて、イカツボ(内蔵)抜き機械の事業可能性調査をやったことがあるからです。僕らが調べた当時は、大型イカ釣り船(総トン数350トン)は約50隻のあり、当該作業の需要があったのです。中国人とアルゼンチン労働者を操業海域で雇用しながら、フォークランドやペルー沖に出かけ、東和電機製作所さんのロボットが釣ったイカを、甲板の下にいる労働者が、安価で簡単な手工具を使い、技術を要しない手間賃作業で、イカのツボをひたすら抜き、船内で冷凍にして日本に持ち帰るという仕組みでした。

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株式会社東和電機製作所ホームページより

技術志向の企画倒れ
そこに自動ツボ抜機械を投入すれば、全自動化されたイカ釣り船ができる!という目論見だったんです。しかしA県の結論は、「イカの価格、機械の価格、労務費を天秤に掛けると成り立たない・・。」と期待を裏切る報告でした。
いくら高度な技術で省力化機械を開発しても、いか釣りロボットが釣る速度(量)を、十分上回る単純作業のツボ抜きに、わざわざお金をかけて省力化する必要がなかっただけです。「こんなもの入れたら作業員が暇になって困る・・・」と言う笑えない船主の言葉が印象的でした。


イカ釣りロボット
高度な匠の技の機械化ですから、ベテラン漁師が何人も乗船したようなもので、休憩も取らずにいかを釣り新たな価値を生む

自動ツボ抜機
技術がない人でもできる単純作業を、ただ省力化するだけですから機械化が新たな価値を生まない


これを陸の上で優秀な技術屋さんと頭のいい行政が策を巡らし、調査を外部の専門家(クルーですが 苦笑)へ委託し、補助金予算が消化されていく・・・。10年前のことですから懺悔の意味をこめて報告です。2月中ごろ寒さ厳しい折、函館、八戸、花巻、釜石、仙台、石巻と一週間回った調査の旅は、土地の漁業関係者の方々の人情が温かく、東北の旬の味わいを堪能した美味しい出張でした。今更ながら大震災が与えた被害の甚大さがよみがえります。

匠の技を「つなぐ」技術
大量均質な消費財を生産する工業化社会は発展途上国に移行し技術移転が起こります。でも、日本の漁師(職人)が鍛えた匠の技は個人技で、誰でも使える産業ノウハウにならないだけに、規模は小さくても技術(ロボット)に取り込み再現すれば、海外から侵されることのない地域のものづくりとして生き残れます。それが東和電機製作所さんの事例でした。

伝統的産業の技術や芸能などは、弟子が師匠のもとで修業をして技を受け継ぐのですが、どうしても職人技が必要となる小さな市場のものづくりは、消えゆく匠の技を機械で「つなぐ」技術!日本の地方産業が生き残るものづくりだと思います。寿司、おにぎりロボットもそうですね。日本のものづくりは、やることがいっぱいあります。この道筋を見極めてデザインする!これからのデザイナーの仕事にしたいと欲張っています。

つづく
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