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つくる側から売る側へ

2011年02月24日 08:00

浜松で悶々としていた時期です。
「給料を倍出すから来ないか?」と誘われ、お金に眼が眩み入った会社があります(苦笑)。
今は残念ながら、数年前に倒産して実在しません。一時、僕の経歴から抹殺(笑)された会社です。別に怪しい会社ではありません。れっきとした販売促進の企画、製造、販売会社です。

30人くらいの小さな会社ですから、周りの人たちは「えっどうして?」とか、身内にも「大丈夫なの?」なんて言われましたが、当時の空気は今よりもっと自由で、社会全体が登り調子のせいか、「まっ頑張れよ」なんて感じで、おおらかでしたね。

その会社は、学習雑誌の付録の企画からスタートした会社で、HやDさんの大手広告代理店と組んで、販促企画からプレミアム商品の製造まで展開するに当たり、企画室を面倒見てくれる人材を探していたんですね。今で言えばヘッドハンティングでしょうか(爆)。イヤー、入ったら大変!いきなり2泊3日のホテル缶詰仕事です。徹夜でやったのが確か、モントリオール五輪の競技プログラムでした。

ある日、営業が激怒して企画室に乱入。徹夜で制作した五輪プログラムの表紙に重大ミス!いくら眼を凝らしても分からない。間違いは、なんと!スタジアムの周囲を取り囲む万国旗の中で、アメリカ国旗にミス。普段見慣れていて間違いようの無い、あの国旗にミス!ですよ。ポール側と反対側に星が並び、ストライプ側をポールに結わえてしまったのです!

starsflag.gif

徹夜でよれよれになっていたイラストレーターもただ筆を動かしているだけ・・・ディレクターの僕も気がつかない。大手HさんもOKを出す。でも責任はこっち・・・。

昔も今も変わらない世界です。士農工商印刷屋という例えもあります(苦笑)。Macなんてしゃれたツールはなく、みーんな手描き。とくにイラストはリキテックスというアクリル絵の具と筆で書くんです。乾かし、乾かし描くんです。

paints
Photo by peyri

あの当時は苦労だったなぁー(遠い眼)。

つづく

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デザインの仕事って? 2

2011年02月15日 11:51

座右の銘ってありまか?
こんなことを言うと年寄りくさいのですが・・・最近、「年寄りっていいなぁー」と感じています。
もっといいのは「ご隠居」ですね!これはもう最高。江戸時代は40歳くらいで家督を譲って、後はご隠居暮らし。困りごとの相談と揉め事の調停など請け負って、世間からは尊敬されていたんでしょうね。早くスーパーセブンをかっこよく乗れる“ご隠居さん”になりなりたい!いやいや今日はこんな話ではなく、「デザインの仕事って?」でしたね。

尊敬するアメリカのデザイナー、ヴィクター・パパネック氏(翻訳 阿部 公正氏)が書いた「生きのびるためのデザイン」に、記憶に残るデザインの本質が記述されています。これが僕の座右の銘になっています。

「有以利為 無以用為」老子

有を以って利を為すは、無を以って用を為せばなり と読むのでしょうか。

一言で言うと、形あるモノが役に立つのは、形の無い何かが作用してその用を果たしている。という深い意味なのです。

例えば、確かこんなことを引用して説明されていました。

・車輪が役に立つのは、真ん中に軸を通す“空虚な空間”があるから
・壷が容器として役立つのは、何も無い”空っぽの空間“があるから
・部屋が役立つのはそこに人が“住める空間”が出来ているから

言われてみたら当たり前ですが真理ですよね。さすが老子先生です!この教えは、前回の渡り方のデザイン(コト)+橋のデザイン(モノ)の話をしましたが、その両方に通じます。より、モノのデザインの真理をついていると受け止めています。

デザイナーと設計者は、ついつい見えるモノの形に心を奪われますが、眼に見えない役立つ本質を創るために、結果として眼に見えるものを作っているんですね。所詮モノはモノと老子先生に諭されているようです。

今年は日芸の卒業作品集に「有以利為 無以用為」の言葉を贈りました。

個紋と揮毫
突然人に、「何か書いてください」って言われたときに、ささっと、こんな揮毫ができると、とてもかっこいいですよ!あなたも座右の銘を探したらいかが?これはご隠居さん必携の技意ですね!

今、座右の銘が新しい!こんなことを流行らせませんか?個紋とセットにするとそれは強力無比!です(笑)。

satoru_komon01.jpg
これに「有以利為 無以用為」を加えてデザインすれば!

実はこの言葉が鈴木自動車工業をやめるきっかけにもなったんです。この辺りは、近々にお話をしたいと思います。


デザインの仕事って?

2011年02月14日 11:22

予告したブログ上の開発シミュレーションは、ただいま準備中!しばらくお持ちください。それまでに、少々基本的なお話をします。

デザインの仕事って?
つい最近、ある企業をお訪ねして、新しくなった開発セクションの方々と、お話をしていたときのことです。

「デザインってどんな仕事をするのですか」

という質問でした。
引き合いに出したのが、有名なオランダはフィリップス社のデザイン部門の言葉です。正確さは保障しませんが(笑)おおよそこのような説明でした。

「われわれは、橋の色と形をデザインするのではなく、川の渡り方をデザインするのだ」

Rotterdam bridge
Photo by Moyan Brenn

そこで、開発スタッフに川の渡り方の方法を、クイズのように幾つも思いつくまま挙げていただきました。

飛び越える→棒高飛びの要領で渡る→泳いで渡る→船で渡る→ロープウエーで渡る→・・・etc

まあ、たくさん発想していただきが、なんとなく、「へーそうなんだ」って、感じていただいたようです。

■渡り方のデザインはソフトのデザイン=コトのデザイン
ビジネスパーソンは急いで渡りたいし、観光者は楽しんで渡りたい。こんな渡り方の行為を計画するのがデザインの最初の仕事です。

■船や橋のデザインはハードのデザイン=モノのデザイン
次にコトのデザインに適った色形のデザインに入ります。そうすると何故このデザインが必要か?このデザインが美しいのか?このデザインはコスト的に妥当か?など、きちんとデザインのマネージメントができます。

こんな話をしたところ、皆さん「目うろこ」状態(笑)。やっぱりこのようなお話は、いつまでたっても飽きずにしないといけないんですね。