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キーワード4:どこまで課題を抱えるか

2010年12月28日 08:00

事例4 日鐵住金建材株式会社 車両用防護柵(ガードパイプ)



4つ目の事例はいわゆるガードレールです。日本のガードレールの設計思想は、運転者の安全確保にも力点を置いているために、歩行者側の安全に対して細かな配慮を欠いている部分がありました。

この商品では歩道側を表側と捉え直し、徹底した突起物を排除を目指し見事に解決しました。

従来の、防護柵を連結・組み立て・施工する現場工法からは、ボルト、ナットなどによる突起をなくすことは不可能だったようです。そこで、閉断面ナット保持具=ナットロケーターの開発により、工場で連結部を作りこみ、専用工具で突起のない結合を可能にする「新工法」まで開発しました。

当該商品は、工場・建築・土木の精度や文化の異なる技術分野のまたがるために生ずる難問を、工場技術=デザインが引き受けて解決する姿勢を貫いたと言えます。

問いかけは、デザイン対象領域を広げることで、諦めていた課題を解決することができるか?

キーワード4:「どこまで課題を抱えるか」


まとめ
いかがでしょうか?コストダウンと低価格ということが現実を支配して、デザインも例外なく、安く!安く!と言うコールの元に、お金を食う部分として、とかく白い目で見られがちですが、より良くしたい!との願望から、新たな価値を生み出すのが仕事で、従来の視点から一歩踏み出し、次のようなデザインの課題を自ら設定し、乗り越えることで、未来の新たなデザインポジションと役割が見えてくると思います。

キーワード1:「どこからできるか」

キーワード2:「どこまでできるか」

キーワード3:「いつまでできるか」

キーワード4:「どこまで課題を抱えるか」


さあ、デザインとは何か?デザイナーとは?などと、型にはめて定義するのはお役所に任せて、僕らはデザインとデザイナーの仕事を、深く、幅広く、先端に、連携させ、などのキーワードを持ち、新たな仕事振りを見せていく事が役割だと思っています。
デザイン教育も変わらなければならない!と、今、真剣に思い始めています。

デザインの可能性 ///4

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キーワード3:いつまでできるか

2010年12月27日 08:00

事例3 株式会社ジャクエツ 遊具 PEサークル



この商品は幼稚園や保育園で使われる体育遊具です。これはフリーランスのデザイナーがきちんと関与した商品で、デザインの基本をしっかり抑え上質な運動環境を創出しています。

目的は、さまざまな組み合わせによって、ベンチ兼多様な遊具の機能を発揮させ、結果として、子と子、子と親、子と先生が、豊かなコミュニケーションを育むというものです。シンプルな形状であるがゆえに、使う側の環境や状況と目的に合わせ、新しい機能を生み出せると言う多様性がグッドデザインです。

商品を一旦顧客に手渡した後に、いつまでその商品の価値を錆びさせることなく、多様性という使い方の可能性を、企業がフリーランスデザイナーと協力し、継続して“遊具の新たな使用ソフトに置き換え提供し続ける”ことができるか?と言うことにあり、それが愛着やファン化、ブランド構築につながるのだろうということです。

キーワード3:デザインは「いつまでできるか」

つづく

デザインの可能性 //3/

キーワード2:どこまでできるか

2010年12月24日 08:00

事例2 日本べクトン・ディッキンソン株式会社
ペン型注入器用注射針 BDマイクロファインプラス





この商品は“針のデザイン”の評価を得たためにエントリーしたものです。果たして美術系のいわゆるデザイナーが“針のデザイン”を成しえたのでしょうか?答はNOだと思います。

AKB48がデザインか?と巷で話題になりましたが、“エンターテイメントの仕掛けをデザインした”と言われれば、それもデザインでしょう。

当該商品もエントリーシートのデザイナーの思いの部分に、技術担当者が堂々と・・・

「「注射は怖い」と思う人に0、23mmの細さと4mmの短い針の提供により、毎日の注射を少しでも快適にして差し上げたかった」

と述べています。ここで問題にしたいのは、これがデザインか?という後ろ向きの解釈ではなく、デザイン・デザイナーの貢献は、どこまでさかのぼって始められるか?と言う未来の可能性です。
問いかけは、デザインは、科学や技術の深部に迫りどこまで可能性を広げられるか?です。

キーワード2:デザインは「どこまでできるか」

つづく

デザインの可能性 /2//

キーワード1:どこからできるか

2010年12月22日 16:16

Gマーク講評会を終えて
12月21日(財)日本産業デザイン振興会デザインハブで、今年度Gマークにエントリーされた企業を対象に、Gマーク講評会(ユニット4・5)が実施され、私もユニット5の審査委員として出席させていただきました。会場一杯に、これからのデザインについて知見を得たいと、熱意みなぎる80名様が参加されました。

審査委員の大島さん、村田さん、山本さんのお話に続き、私は受賞商品を題材に、「デザイン・デザイナーの仕事と可能性」を4つのキーワードにお話をさせていただきました。そこでの話を4日に分けてお届けしたいと思います。

事例1 コミー株式会社 ラミコート




当該所品はオフィス等の通路などに取り付け、死角を排除しスムーズな往来を可能にする、いわゆるカーブミラーです。

縁なし、軽量、シンプルで存在が周辺に馴染みながら、必用時にきちんと機能する美しい商品です。設置時の三方チリ合わせが本体を浮かせて見せ、それが“軽量感演出の鍵”であることを見抜く眼力が、設置金具の仕掛けに生きていて見事なデザイン仕事になっています。これ以上省くことも追加することも不要なプロダクトに仕上がっています。

この企業さんは毎年ミラーの新商品をGマークにエントリーされて、確実に商品力とデザイン開発力をつけられています。

デザインの仕事は前述したように美しい形を創作することですが、本質は“チラ見をして、瞬時に対象物(人)の状況を把握できる適正な映りこみの曲率と反射範囲の計画“だと思います。実はそのバランスの上に、美しいデザインが成り立っているのです。問いかけは、そこまでデザイナーが関与できる見識を持って、美の原点に迫れるか?と言う未来の可能性です。

キーワード1:デザインは「どこからできるか」

つづく

デザインの可能性 1///