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デザインは価値向上が最大目的

2010年12月15日 08:00

●出来上がったものの価値を下げずに生産管理でコストダウンする方法が「VA」

●これから創るものの価値を同等に保ち設計段階でコストダウンする手法が「VE」

●これから創るものの価値を上げてコストを最適化する手法が「VD」

※VA Value Analyisis  VE Value Engineering VD Value Design

デザインは、VE活動と連携し“設計時点でデザインしながらコストダウン”することは可能です。
現実に私は前職場(スズキ)で、ある新商品開発で設計と共にチームを組みコストダウンをした経験があります。しかし、これは企画から開発、設計に至る工程で、デザインを取り入れてこそ可能なことで、異なる専門家が開発の工程を同時に走るプログラムがあってのことです。しかも求める価値は同等で上げることは想定していない手法です。

往々にして、企画と設計が終わってからデザイナーに、「金をかけないで格好よくしろ!」なんて、無理難題を押し付け、結果、「やっぱりデザインはコストアップになる」、なんて、大いなる勘違いが横行しています。

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・・・となると、やはりデザインの目標を、新しい価値を生み出す。あるいは向上させることに求める!というほうが絶対お得です!
さあ、あなたが抱えているテーマを、コストダウンから新たな価値を創出する目標に変えて、デザインとタッグを組んで行動開始しましょう!

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「生産財」だからこそ、もっと格好よくしよう

2010年12月14日 08:00

例えば・・・

消費材
自分が身につける衣類・帽子・靴にデザインはいらない!なんて思う人はいません。
生産財
(ちょっと微妙になりますが)制服・作業服、ヘルメット・作業靴にデザインは?・・・やっぱり絶対必用ですよね。

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ミドリ安全株式会社 軽作業帽

消費材
自分が買うクルマも動けばデザインなんてどうでも良いや!なんて人はあまりいません。
生産財
それでは、営業車やトラックにデザインは?・・・これも絶対デザインは必要ですよね。

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大原鉄工所 雪上車輛

でも、デザインに対する要望がちょっと違うことに気がつきませんか?

ファッションは、個人の価値観のもとに、見た目のイメージ、その日の気分・・・など、いわゆる個人の感性と生活信条で選ばれ、デザインはその感性に訴える素材、色彩、スタイル、コーディネート、販売方法など、必死になってアプローチします。

機能性下着は機能のためだけ?
最近の機能性下着など保温性などの機能を謳っていて、一見、機能を追いかけているようですが、“薄着をしても寒くなく、すっきりした体型を保ったまま、重ね着ファッションが楽しめる!”というおっしゃれ目的で買われています。

■消費財は、デザインに「私のライフスタイルを表現してくれる」こと!という優先順位が求められます。

それでは、作業服はどのように選ばれるのでしょうか?
同じ作業服でも、キャビンアテンダントや、デパート案内の女性の身につけるものと、生産現場で機械を操る作業者の身に着けるものは異なりますが、いずれも、業務目的を最大限に発揮する機能を盛り込んだ“お仕着せ”の制服で、個人の好みはほとんど反映していません。憧れの制服!という価値まで到達できれば最高!です。
バンダイのプラモ工場(バンダイホビーセンター)は、まるでガンダム基地で、働く人はみんなガンダムっぽい制服を着ていて、工場見学が引きもきらない状況です。※1

■生産財は、デザインに「機能的な活動ができる」こと!という優先順位が掲げられます。

しかし、いずれの事例も、デザインなしには語れないことは明白で、デザインに求められる条件と優先順位が異なるだけであることが分かります。ここで再確認しなければならないことは、

カッコイイ!は軽薄?
デザインは余計な装飾ではなくて、機能も含んだ“総合的な格好よさ”の表現であることを認識すること。
“格好良い”というと、いかにも軽薄な表現に聞こえますが、その場に適しているから格好いいと考えればいいのです。それは一見して、誰の目にも、心にも訴える、欲しいと思わせる力につながります。格好いいとはとても深い概念なのですね。

※1 マイコミジャーナルのレポート記事

石川県のグッドデザイン 2

2010年12月13日 09:00

サミッター  株式会社ニシムラジグ
もうひとつの事例が、同協会会員企業の(株)ニシムラジグが開発した“サミッター”という加工ジグで、文字通り、加工途中のワークの直角頂点を簡単に検出するジグです。

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加工機械からワークを外すことなく、空間上にしか存在しないXYの原点を、時間ロスを最小限にして求めることができるので、時間と神経を浪費するワークの再セットが不要になります。製造業にとって時間=利益そのものです。いわば、“計測の時間を短縮しつつ、精度を作りこむ製造業の利益づくり”のような商品です。

見た目がとてもチャーミングで、社長の茶目っ気でしょうか、パッケージに宝石の指輪ケースを利用しているんです。こんなセンスが中小企業にもっと欲しいですね。

サミッターはトヨタをはじめ、多くの製造業で売れ続けている素晴らしい商品です。これも2009年度グッドデザイン賞を受賞しました。

この商品のデザインポイントは、加工、計測、加工、計測の繰り返しで、狙った精度を作り出す“機械加工行為自体にある課題を実感している当事者“だからこそ生み出せたデザインです。

■問い
これを参考に自社のデザインアプローチを考えるとどうなるでしょうか?


本来はデザイナー自身が加工作業者であれば最高ですが、そうは行きません。ここもやはり、以下のような手順で考えることが必要です。その結果、デザイナーが「現場」を深く理解し、設計者と異なる経験とスタンスから新たな解決策を提示できるようになります。

・徹底して加工(生産)そのものの行為と流れを熟知すること

・テーマを「ジグ」のデザインという「モノ」のとらえ方をしないこと

・“加工→計測という仕事の流れ”をデザインする「コト」をテーマすること

・「コト」を「モノ=カタチ」のデザインで表現すること


ここでも結果的に、デザインは単なる「モノ」の形を生み出すことをテーマにするのではなく、「コト」をテーマに据え、仕事の流れをデザインする=「ING DESIGN」という姿勢が、新たな価値を生み出すデザイン行為であることがわかります。

次回は、「生産財」のデザインはどうあるべきか?消費際のデザインと比較しながら、「デザイン姿勢のまとめ」に入りたいと思います。

石川県のグッドデザイン 1

2010年12月10日 09:00

今度は日本海側を西に移動し、石川県のものづくりをご紹介します。「デザイン開発に熱心な団体です」とご紹介した社団法人石川県鉄工機電協会の会員企業さんの事例で、生産財デザインの現状とあり方を考えてみたいと思います。

緩衝キャスターVトーションスプリングタイプ
シシクSISIKUアドクライス株式会社

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この商品は2010年度のグッドデザイン賞を受賞しました。写真で見て分かるとおり、本体に直接トーションスプリングを取り付け、その先にタイヤをセットするという、しごく単純明快な構造です。この方式により全方向からの衝撃・振動をやわらげ、さらに、スプリング線径によって衝撃荷重を受ける性能を変えることができるのです。

余計な説明をしなくても、“見た目で機能と性能が直感的に分かる”デザインアプローチで、“キャスターの新たな需要を喚起する”グッドデザインです。具体的に言えば、“ショック吸収機能を目に見えるように表現”したことが、新しいデザインアプローチなのです。
同機能を台座に内蔵したキャスターが乗用車であれば、この商品は足回りが露出したF1のようなデザインです。足回り(線径)の太さと色の違いで“台車の適正加重が直感的に識別できると”・・・現場に何かいいことが起こりそうです。

■問い
このデザインアプローチを参考にし、自社のデザインに活かすには、どうしたらいいか?発想してみましょう。


類似した参考事例としては、「IFFT」で提案されていた川口工器株式会社の、フレームを露出させた座椅子「OSSO」と、通常の“きぐるみ”座椅子の違いですね。

「OSSO」は、フレームを外に出すことで、座椅子の構成部材が持つ機能が“白日の下にさらされ”、そのお陰で、消費者の心に“座椅子の素材と機能を新たな尺度で見直す眼“が育ちました。これは新たな商品分野を創出することになり、企業が大きなマーケットを手に入れたことになります。

工作機械なども使用者側にたって、設計者とデザイナーがとことん話し合い、デザインしたら、新たな解決策が見えると思っていいでしょう。

良いデザインをするには覚悟が必要

2010年12月09日 09:00

継続努力か?借り物の成果か?
「あの会社の商品はいいねぇー」なんて言ってもらえるには、継続したデザインが必要で、ちょっと手を抜くとバレてしまう恐ろしいパワーを持っています。
だから1度良いデザイン評価を受けると、ますます設計者が手が抜けなくなるし、商品の完成度をもっと高くしたいと思うようになるんですね。結果的に経営と技術のセンスが向上し、「良い会社だね」って言われるようになるのです。

しかし、デザインを工程に取り入れると確実に工数はアップします。ですから、経営者と技術者が嫌がります。でも良い商品を開発するには必要なことです。ブランドをしっかり築いた会社は、しっかりと継続努力をしています。

ただし、表面的ないい形を取り急ぎ欲しいだけであれば、面倒くさいことは不要。できるデザイナーの感性に任せれば、それなりに良い見栄えの良い商品に仕上がります。でも結局短期勝負の一発商品しか手に入りませんし、借り物の成果でしかありません。

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