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コラボレーションで伝統の磨き合い

2012年02月20日 11:56

怒涛の出張
先週は大変な一週間でした。講師をしている日本大学藝術学部デザイン学科「デザインマネージメント論」と、友人の峯弁理士さんが講師をする中央大学法学部「知的財産法務ゼミ」との合同授業の後、山形市事業の「つなぐ」勉強会から怒涛の出張が開始しました。山梨県デザインセンターでの研修、広島は呉の酒蔵「千福」で事業キックオフ、また山形に逆戻り、今度は日本海側、鶴岡は庄内地域産業振興センターで、商品開発研修の立ち上げ、といった具合。自宅は着替えの中継地点・1時間滞在、会社は書類に受け渡し場所で、つばさ→かいじ・あずさ→のぞみ・さくら・のぞみ→とき→いなほ→とき・・・と、JRの列車内がオフィスになった一週間でした。

日本の伝統行事がクール!
さて、ドイツのシュタイフ社のパートナーシップで、「テディベア市松」をつくられた(株)吉浜人形 代表取締役社長 神谷毅さんのお話の続きがあります。

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スペインのリヤドロ社とのビジネスパートナーとして、積極的に節句を再興されようと頑張っています。最近、リヤドロ社の雛人形のCMを見た方や、デパートで実物をご覧になった方も多いと思います。なかなか新鮮ですよね。この会社は、シュタイフ社のテディベアと同じように、日本人ファンが多いことでも有名です。しかし、リヤドロ社の節句人形参入は、国内の職人の仕事が脅かされるのではないかというという脅威があり、人形業界の反応は冷ややかだったようです。神谷社長はおっしゃっていました。

「私は、日本の節句行事が世界ブランドに認められた事は誇りに思うべきであり、世界への入り口になると解釈しました。」

伝統は弛まぬ変革で育つ
今あるカタチを守ろうとするのか?あるべきココロを守ろうとするのか?モノの見方と姿勢によって、さまざまに解釈が成り立ちます。振り返ってみると日本の文化は、西から入ってきて、極東の最後の最後のドン詰まりで、進化と洗練の極みとなり、日本オリジナルの文化として昇華されたのだろうと思います。とりあえずキョロキョロしながら、どんなものでも一旦受け止めて、整理し改造し、いつの間にか日本独自のものに仕上げでしまう。ひな人形もそのうちの一つですね。
伝統とか文化は変化と工夫の果てのオリジナル化なのだろうと思います。伝統産業の方々には、そこを「もっと柔軟に受け止めてほしいなぁー」と日頃感じていました。神谷社長の夢は続きます。

「様々な文化を運んだシルクロードの終着点である日本から、文化の発信地として、シルクロードを復活させたい!名づけて「プロジェクトオーバーロード」というプランをずっと持ち続けています。テディベア市松はその為のはじめの1歩です。」

伝統の磨き合い
なるほど!これは伝統の磨き合いで、お互いが文化の素晴らしさを認識し、ある時はコラボレーションする。ある時は相手の文化に取り込まれる。ある時はかたくなに文化を守る。こんなことを重ねて行くうちに、洗練されて、本論、本質を見失わないようにしつつ変形し、その時代に相応しい形にまとまる!これが伝統産業の生き方なんだ!ひとり合点が行ったお話でした。そのためにこそ、匠の技を磨き継承することと、その価値を引き出すデザインの智恵が必要なんですね。

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さあ、これから始まる伝統づくり

2012年02月09日 14:05

今、僕はいくつかの伝統産業の仕事をさせていただいています。仏壇、節句人形、打刃物、指物、和紙、そして日本酒です。現状いずれも厳しいものがあります。しかし、決して未来を悲観していません。理由は、日本が西欧の生んだ産業モデルをキャッチアップして、戦後復興を果たすために忙しすぎて、先人たちがつくってくれた良いものごとを、まともに見つめる余裕を持てなかっただけです。311以降、僕等のマインドが大きく転舵しました。一番落ち込んだ底から這い上がれる時代になったからです。

新興国に、私たちが磨き上げた日本型産業モデルを奪われた意識を、先輩としてバトンタッチする意識に変えましょう。これからが、“日本発想の産業モデルを創作する時代”です。そこで!数百年の歴史があり、工業化のための下支えになり素晴らしい「技」を提供してくれた伝統産業を、もう一度きちんと洗い出し、私たちのものづくりを復興する機会にしましょう。

しかし、単に伝統の復活と言うノスタルジックではなく、新たな工業モデルの下支えにするのでもなく、伝統産業と、これからのものづくりの相乗効果を発揮するような、 日本発の21世紀型産業モデルを発想したいものだと思っています。そう考えるとワクワクしてきませんか?伝統は革新を重ねることで、新たな魅力を生んで、また伝統を創るのだろうと思います。

初節句とファーストベア
そんな中で、僕が関係している節句人形の話を少ししたいと思います。節句は日本の暦の一つで、伝統的な年中行事を行う季節の節目です。今では、五節句の中でも、3月3日桃の節句と5月5日菖蒲の節句は、それぞれ女児と男児の節句として、「初節句」を筆頭に、祝う寿ぐ風習は、各地でしっかり生きています。そのシンボルが雛人形であり武者人形です。

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株式会社吉浜人形ホームページより

同様に欧米では、その人が初めて手にするテディベアのことを、ファーストベアと呼ぶようです。赤ちゃんが生まれると、初めての友達としてテディベアを贈り、小さなころから自立心を育てようとする欧米思想から来ているのでしょうか?余談ですが、僕等夫婦は数年前に、息子の結婚式のクライマックスで、3400グラムのテディベアをもらいました。還暦を迎えた夫婦のファーストベアってわけです。親を泣かせて楽しもうと言う昨今のイベントに巻き込まれました(苦笑)。それは同時に子育てを終えた“老夫婦育て”のつもりでしょうか?昨晩、ひとりでそっと抱いてみたら、ずっしりと手に感じる重みはそれなりの感慨を呼ぶものですね。欧米では、おじいさん、おばあさんになっても隣にはテディベアがいる、そんな風景がよく見られるそうです。節句人形も頑張れる余地が有りそうですね。

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テディベア市松
ここに一体の市松人形があります。これは愛知県高浜市で事業を営まれる株式会社吉浜人形さんが制作した、ドイツはシュタイフ社ブランドのテディベア市松人形です。アンゴラモヘアでできたベアが身に付けている着物は正絹で仕立てられ、正式に着つけられています。1000体が制作され、ドイツでは大好評でおおよそ300体があっという間に売れてしまったそうです。今、クルーの大切なマスコットになっています。

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代表取締役社長 神谷毅さんは語っています。
・・・日本における節句行事は親から子への想いを贈る行事であり、世界に誇れる文化である。必ず世界のマーケットに通用します。・・・テディベアには「ファーストベア」という「初節句」と非常に近い特性をもっている事から、日本文化との融合を提案し、ドイツ本国の販売において大成功しました。書籍を輸出する際に必ずするのが「語訳」です。文化をお出しする際にも必ず「相手に受入れて頂ける解釈」が必要であると確信しています。その後に本物志向が生まれ、その土地に対し、ありのままの形が受け入れられるのが一番文化を定着させる為の近道であると確信しています。

本物は世界中で通用する。しかし、それをそのまま押しけるのではなく、「語訳」が必要だ!受け入れられた後に生粋のものを示す。伝統産業の復活に対する「極意」を教えていただきました。

和製オープンイノベーション

2012年02月02日 08:00

「ガス式熱バサミ」は、いったいどのようにして開発されたのか? 
この点が最も興味を抱いたところでした。外山刃物さんは、創業は江戸時代の文久年間で、現在は「宗家秀久」というプロの方から絶大な信頼を寄せられているブランド企業です。10数年前、僕が燕三条地場産センターに、アドバイザーとして通い始めて間もなく、ある商品デビューでご相談に来られたと記憶しています。知る限りでは、単独でこのような商品を開発するシーズをお持ちではありません。
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外山刃物ホームページより

和製オープンイノベーションに大拍手!
応募登録資料には、明治31年創業の中島銅工株式会社・ガス式コードレス半田ごて(コテライザー)を製造する企業とのコラボレーションによって開発したことが記述されていました。ニイガタIDSデザインコンペテションの特徴は、審査委員賞と言うタイトルの「賞」があります。この商品の優秀性は全ての審査委員が認めるところでしたが、僕にとっての一等賞が「ガス式熱バサミ」でした。理由は、商品の素晴らしさに加え、伝統産業がその枠を超えて、同じ志をもった先端産業と手を携え、顧客のご利益達成のために「協業」したことです。

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刃物の切れ味をひたすら追求して、他社よりも優れた製品をつくる競争も必要です。しかし、それは行きすぎると、競合他社を横目でにらみ、他社よりも一歩首を出す顧客不在の企業間競争の危険性をはらんでいます。1997年。アメリカオープンイノベーションの騎手であったアップル社がiMacを発表した当時のメッセージを、またもや思い出しました。

(前略)これまでのような、横並びの競争の中で周りを見ながら走り、そこから一歩抜け出すことだけを考えていれば良かった時代は終わりました。自分のあり方を主張し、他と違う自分なりの戦い方を明確に持っていなければ戦えないということに、企業も、そして個人も気づいています。(後略)

「ガス式熱バサミ」はまさにApple社の如く、競合のいない自ら作った「ブルーオーシャン」を気持ちよく泳ぐビジネス展開がなされる事を心から祈念します。

コンセプトを共有して市場を創る

僕も同じ新潟県(長岡)生まれですから、独立心旺盛なだけに、それが災いして誰かと助けあうことが苦手な越後人気質をよく知っています。まして江戸時代から続く伝統産業であればなおさらです。それが、同じビジョンを共有しモノづくりや商いの常識が異なる障害を乗り越えて、商品開発を行った行為そのものに、大きな拍手と「賞」を差し上げました。これは、日本を窮地に追い込んだアメリカの“オープンイノベーション戦略”です。これこそ、日本の地方中小製造業が生き残る手立てだと確信しています。
僕が山形で行っている、住宅と仏壇(伝統産業)を「つなぐ」事業も同様です。

諦めない心が出会いと成功をもたらす
外山秀久社長にお聞きしたところ、このプランは外山社長の発想で、平成5年、「(財)にいがた産業創造機構(NICO)」が主催する「「ゆめ・わざ支援事業」において、新潟県の工業技術センターの指導受けながら開発がスタートしたようです。しかし、さまざまな試行錯誤を重ねても、思ったような解決方法に辿りつくこと叶わず、一旦、開発を中断。以来、宿題が頭から離れず、悶々とした日々を送っていたとのことです。

しかし、3年ほど前に外山社長のご友人より「鋏を作ってほしいと言う人がいるのだが・・・」という相談があったそうです。
それが埼玉県ふじみ市の「中島銅工」さんです。中島武士社長ご自身が、園芸趣味のある方で、自社の“ガスコードレス半田ごて”の技術を活かしたいが、ハサミはつくれないと悩み、外山刃物さんは、刃物はお手の物だが熱で断つ技術はないと宿題を抱えていた。この出会いは文句なし!理想の結婚でした。

薄刃に発熱の触媒を仕込んで、切れ味を損なわない刃物を鍛造でつくる。これは大変な苦労だったと素人でも想像に難くありません。開発は見事に成功しました。偶然の出会いのようですが、実は必然なのだと思います。志と欲しい技術を人に語る。日々悩み続ける・・・そうすると解決策の糸口が向こうからやってくる。アイデアが忽然と生まれる。そんな経験が僕にもあります。

「熱で断つ」!これから先が楽しみ
さあ、商品開発の後は事業開発です。事業成功の秘訣は素早い普及と、市場でのデファクトスタンダード化です。どなたか、この可能性に満ち満ちたビジネスパートナーになりたいと思う方はいらっしゃいませんか?「熱で断つ」この働きを応用すると、もっといろんなことが出来そうです。さあ、「発想しましょう!」
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モノを売る前に市場を創る

2012年02月01日 13:50

ヨーロッパで人気の「BONSAI」ビジネスは、単に盆栽を販売するだけではないのです。盆栽を楽しむための技術講習を積極的に開催し、とりわけ、子どもたちを将来の大切な顧客として一人前に扱い、丁寧な顧客育成を行っている姿が印象的でした。
つまり、「もの」を売る前に「こと」を整え、売れる状況を同時開発する手法です。日本も、盆栽や剪定鋏が売れない・・・と嘆く前に、市場をつくる努力をしなければなりませんね。

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想像してみてください。フランス人形のような面立ちをした小さな子供たちが、真剣なまなざしで「BONSAI」に鋏を入れている姿を!(笑)。大宮の盆栽美術館に鎮座している松は、何と樹齢400年ですから、その子が親になって、自分の息子や娘に愛しんだ自慢の「BONSAI」の手入れの手ほどきをしている姿を思うと・・・日本もしっかりしないと。日本人も「BONSAI」の良さを分かるんだね!なんて言われないようにしましょう。

Bonsai!
Photo by Carol Browne

イギリス人が自慢する鉄道模型が“king of hobby”ならば、「BONSAI」は、さしずめ“mikado of Douraku“ 帝の嗜み”ってところでしょうか(笑)。僕らは一度立ち止まって、自分たちが取り残してきた素晴らしい文化や嗜みを探してみましょう。きっと世界が望む新しい産業の芽が見つかると思います。

伝統の技と最新テクノロジーのコラボレーション
最近、世界の「BONSAI」や園芸に、大きな影響を与えるかも知れない、意欲的な商品に出合いました。僕が提唱している「つなぐ」デザインのお手本となる事例でした。

それは、 ニイガタIDSデザインコンペテション2012の審査で出合った「ガス式熱ばさみ」(株式会社 外山刃物)です。

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画像をご覧いただいただけで、「こりゃ、何かやったな!」という印象が伝わって来ると思います。農園芸作物の摘果・選定時に起こる“病原性微生物の感染”を防ぐことを目的に開発されたもので、鍛冶(鍛造)の技で鍛えた伝統的なハサミに最新機能を仕込んだ製品です。

鋏の持ち手の一端についているのは、何とガスボンベです!持ち手の中に着火装置が内蔵されていて、ハサミの薄刃に組み込んだ発熱体(触媒燃焼装置)を加熱させ、刃を常時90℃に保った状態で、対象物を切断できる!と言う、世界初のガス式熱バサミです。

使う理由を考えさせる怪しい魅力
これで、丹精込めて育てた果実や高価な胡蝶蘭など、さまざまな感染で台無しにしてしまうことがなくなります。今まではどうしていたかと言うと、薬液の入ったタンクを担ぎ、ハサミを使うたびに作業を中断し、刃先を消毒していたんですね。重いタンクを担ぐ作業の辛さ解消はもちろん、薬液の人体や環境への悪影響も防げます。もうひとつの手は、90℃に保つための容量の大きい外部バッテリーを担ぎ、長いコードを気にしつつ捌きながら、効率の悪い作業を我慢して行っていたようです。

このハサミの熱源であるガスの供給は、みなさんが鍋料理をする時に使う、お馴染みのカセットガスコンロのガスボンベが使えるんですよ!嬉しいですね。モノ好きの僕としては、使う必要がないけれど、直感的に「欲しい!」と思いました。ですから今、使う理由を一所懸命考えています(笑)。つまり、購入を誘惑させる怪しい魅力を持った商品は、不要な人にさえ使う理由を考えさせてしまう「力」を持っているんですね。

そう言えば、数年前クルーがデザインしたKTCのEKRと言う工具箱の購入アンケート調査をしたところ、ガーデニング用に購入した。と回答された方が相当数いらっしゃいました。「ガーデニングで何で工具を???」と、思っていたんですが、これで謎が解けました。ひたすら欲しかったんですね!ありがたい!デザイナー冥利に尽きます。

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つづく

未来は・・・つないで創る

2012年01月31日 11:27

50年後には日本の総人口が8600万人になる
2048年に日本の人口は1億人を下回り、2060年には8674万人になるとの試算が、厚生労働省から発表されました。その時、なんと65歳以上の高齢者が40パーセントを占めて3460万人となります。このまま手を尽くさず行くと・・・と言うことですが。少子高齢社会化を、どのようにストップをかけるか?国家存亡の重大な課題です。一方では高齢成熟社会で、活力ある産業を創出できないものか?ぼんやり考えていたところ、膝を打つ情報を目にしました。

「BONSAI」が海外で人気
NHK「クローズアップ現代」で、盆栽がヨーロッパ、アメリカ、アジアでブームを通り越し、ホビー(アート)として定着しつつあると言う特集です。「BONSAI」は海外で国際語となった半面、本家の日本ではお金持ちの趣味か、御隠居さんの嗜みとして衰退しています。

bonsai
Photo by teresafranco

マン盆栽や苔アートなど新しい動きもありますが、ガーデニング市場や菜園づくりのようにマーケット的には今一活気のないのが実情です。

高齢の巨匠が尊敬される
盆栽ビジネスを普及させるため、高松のある盆栽農家経営者がフランスに出かけ、BONSAIセミナーの講師を行っていました。功妙ではありませんが、力強い英語で次のように語りながら剪定鋏をふるっていました。その場は、何と「盆栽大学」と記された看板を掲げた“フランス人盆栽事業経営者のセミナー”です。

正面を決めたたら大切な枝を活かすように細かな枝を切るんだ・・・
大胆に思いきり良く剪定鋏でバチバチ枝を断ちます

樹皮をこのようにはいで・・・
松の樹皮に切れ目を入れた後、バリバリ手で皮を剥いで行きます。フランス人たちは初めて目の当たりにする技に、大きく眼を見張り職人の手さばきを見つめます。
極めつけは鉢から植木をそっくり抜き出して、土を払い、根を露出させ、自然界で雄々しく生きる松の根元の荒々しさを演出します。

「Oh!fantastic!あなたは巨匠だ!なんて見事なんだ、素晴らしい!」
尊敬に満ちた眼差しで、日本から来た盆栽農家社長(盆栽職人)を見つめ、惜しみない称賛の言葉を送ります。
BONSAIはこんなに小さいのに、ダイナミックな自然の情景を居ながらに見せてくれる。日本の素晴らしい芸術だ・・・

と、興奮気味に語っていました。

本当のクールジャパンは高齢者社会が創る!
「はじめは一万円くらいの安価な盆栽から始め、育てる技をレクチャーして愛好家を育て、次に高額な盆栽を勧める」
こう語ったのはミラノで盆栽ショップの経営者です。
僕の想像ですが、そこにはきっと、鍛冶の技で鍛えた切れ味のいい「剪定鋏」陶芸職人が生みだす魅力的な「鉢」ワーキングウエアである「藍染の作務衣」室内で愛でるための「床の間と掛け軸」も必要となります。「盆栽」は、伝統職人のデザインを学ぶ意欲、技法を極める姿勢を加速させます。

盆栽美術館 - bonsai museum
Photo by norio.nakayama
さいたま市大宮盆栽美術館


更に、「盆栽」という植物を海外に輸出するためには、検疫をパスしなければならない大きな課題があります。寄生する害虫や菌の駆除をはじめ、さまざまな管理手法と設備投資などが求められ、農業の高度化に結びつきます。これらは新しい産業としての萌芽に結びつきます。このような活動をリードするのは、経験豊かな高齢職人と、若い技術者のタッグマッチが必要で、とても可能性のある暖かな希望を持たせてくれました。

日本文化が新しい産業モデルと創る
自然に挑戦・克服し快適な暮らしを勝ち取ってきた西洋文化と産業に対して、自然と共生することを旨としてきた日本文化と産業。それが生み出した芸術である盆栽が、今、西洋社会に憧れと尊敬の念を持って受け入れられつつあり、産業として育つ可能性を見せています。

乱暴で事象の一端しか見ていない思考ではありますが、これからの日本産業の未来は決して悲観したものではないし、高齢化社会も希望がないわけではない。若い労働者を基盤とし繁栄してきた西欧産業モデルを、戦後、懸命にキャッチアップし完成の域に達成させた日本が、その成果を工業新興国に差し上げ、新たな産業モデルを創りつつある一例を垣間見た気がしました。優秀な工業製品をつくることだけが日本の再生ではなく、伝統産業と最先端産業が力強いタッグを組んで、世界から尊敬される産業を創る!可能性大です。