fc2ブログ

ものづくりの魂と商いの魂 4

2011年07月08日 08:00

ニシムラさんシリーズに、とうとう今週いっぱいジャックされました。私自身が西村流「人たらし術」にすっかりはまったということです(笑)。お話を聞けば聞くほど、頭で学んだことの裏打ちをさせていただいていることを実感します。また折を見て工場の儲かる現場の秘密をご紹介します。

産業団体と公設研究機関の後押しがあった
最後にもう一つご紹介します。株式会社ニシムラジグさんは、社団法人石川県鉄工機電協会さんに所属しています。そこで行われる「デザイン研究会」に一生懸命、若い社員とともに受講され、厳しい私の指導にくらいついてきます(笑)。とにかく真剣なんです!それをしっかり受け止めるデザイン研究会は、アサヒ装設株式会社さんの山本社長が会長役でけん引されていて、私が知るなかでも中身の濃い活動をされているトップランナーです。

それより以前、県の工業技術センターや(財)石川県デザインセンターが主催する事業に参加し、そこでドイツの『スカラデザイン』と知り合うことで、現在の躍進に至っているわけです。ということは、石川県のデザイン振興機関が素晴らしい役割を果たしていることに、みなさん着目して欲しいと思います。地元の公設試験研究機関を一度訪ねて行ってみると良いですよ。きっと新しいチャンスの扉が開くかも知れません。

職人とタキシード
Tuxedo Shirt 6-10-08 -- IMG_0623 Manos de trabajo / Working Hands
Photo by PAWLUK IVAN

西村さん 「先生!来週家内と一緒にレッド・ドットの授賞式に行ってきます」
馬場   「それは、それはおめでとうございます。」
西村さん 「5日間でタキシードのレンタル料が五万円!高かった!」
馬場   「会長!お土産は晴れ舞台の写真をお願いしますね。」
西村さん 「それじゃ、行ってきます!」

作業着に赤いアポロキャップをきちんと被り、首にかかったタオルをとって、笑顔でお話をされた75歳の元気な姿が目に浮かびます。共にご苦労をされた奥様も同伴されるそうです。それを聞いてジンときました。ノーベル賞に匹敵します。

奥さまは留袖(色紋つき?)かな、会長さんはタキシードとブラックタイです。今頃は、レッド・ドットの晴れ舞台で、日本は金沢からやって来た職人さんが、切削油で黒ずみ小傷でいっぱいの、名誉ある働いた手を差し伸べて、ペーター・ゼーツ(今もセンター長だと思います)と、がっちり握手を交わしているでしょう。想像すると泣けてきそうです。どんなヒーローやヒロインよりも、輝いていて素敵だろうなぁーと・・・。

reddot.jpg
reddot
左から: Scala Design designer Peter Theissさん/さとやま設計社 代表取締役 岩井 庸之介さん/株式会社ニシムラジグ  会長 西村 明/会長夫人/KEN OKUYAMA DESIGN CEO 奥山 清行さん


みなさん「やっぱりものづくりっていいですね!」この世界は、まだまだ捨てたもんじゃない!しみじみそう思いました。

デザインはもっと頑張れる!

ものづくりの魂と商いの魂 3

2011年07月07日 08:00

『グリッパー』でドイツの3賞を受賞したニシムラジグさんは、「商いの段取りとものづくりの算段」これを同時に展開している会社なのです。

2004年アメリカ発の「オープン・イノベーション」を標榜したパルサミーノレポートでは、欧米がNIEs/BRICsを取り込み、ジャパンナッシング作戦を展開してきました。顕著な実績を上げたのがインテルで、マザーボードを台湾に製造を託し、あっという間に半導体地図を塗り替えてしまった現実をご存じだと思います。

実はニシムラジグさんは、台湾企業としっかり握手をして、製品を世界中に販売しているのです。しかし、ただ任せるのではありません。インテルがMPUをPCIパスで秘匿し、プロトコール(公式手続き)と使い方のレシピを、チップに添えて提供していることと、全く同じようにやっているのです。しかし、それが日本人流。いや西村流です。

商いの肝は素早い普及と標準化
日本で一番欠けているのが速度感だと思います。いくらいい商品を開発しても、もたもたしていたら、あっという間にほかの国に漁夫の利をさらわれてしまいます。それを防ぐには、市場にいち早く流し世界のデファクトスタンダードになることが、市場で勝ち残る王道です・・・というのがオープン・イノベーションだということなのです。
小さな企業は特に分業と協業による市場づくりがキーワードなんですね。その点、台湾という国は素晴らしい力を発揮してくれるようです。ニシムラさんはそれをしっかりわかっていて、ドイツのデザイン、日本でのモノづくり、台湾での販売と、コラボレーションを実践しています。(デザインはドイツって所がちょっと悔しい(苦笑))

「防禦」は、精度の絶対的自信と義兄弟的つながり
『サミッター』という商品を以前ご紹介しました。
この商品も台湾から世界に普及を図っています。協業で小さな企業が不安になるのは、いつか真似をされるのではないか?ということです。

nishimuraboss.jpg
株式会社 ニシムラ ジグ  会長 西村 明 氏
「わしゃ、そんなこと全く心配してません」と、にこにこしながら西村さんは言います。理由はコストに見合う精度が出せるのは自分のところだけという自信と事実。

それにもまして、西村流「人たらし術(失礼)」で、相手の懐に飛び込み、今では台湾企業経営者の葬儀に参列するなど、義兄弟のお付き合いをされています。台湾は日本以上に信義に厚い国なんですね。
欧米がNIEs/BRICsを取り込めたのは、留学生に対する親切な扱いです。日本人がかつて、孫文を支援したように、アジアの国として、本来すべきことなのだと、ここでも反省しきりです。    

nishimura01.jpg

ものづくりの魂と商いの魂 2

2011年07月06日 08:00

『グリッパー』と名付けられたタップハンドルは、タップ以外に、リ―マ、ドリル、ダイスを加えて作業することが可能で、左右の持ち手を逆に付け変えることで、円周が大きくなり、小さな入力で大きな出力が出せるようになっています。またくわえる部分も工夫がなされて、丸い断面の刃具もガッチリ締めこむことができる。固定ネジもすぐ外れることなく、刃具の交換にストレスがないなど、鉄工所として使っているからこそ!痒い所に手が届く工夫がなされています。

jig3.jpg
詳しい使い方はグリッパー商品紹介ページへ

圧巻は、美しいハンドル形状で、素手で回しても手が痛くならす、手力を確実に回転力に伝えてくれます。これも加工コストを知り尽くしている鉄工所が“悪戯に工数を上げること無く美しい形”を生みだすか?考えた末の形状で、苦心の跡が伺える工作でした。現場を見ない最近の若いデザイナーに、高度なマザーマシン以外、人の手が紡ぎだす精緻なものづくりを可能にする手工具の美しさを、手に取り、この国のものづくりを支えてきた原点を感じて欲しいと思っています。

手が痛いからと言ったら、いきなりエラストマーのハンドルカバーを被せる“スタイリングデザイナー”の首を絞めてやりたくなります(苦笑)

デザイン評価の心意気
このような現場で使われるプロの作業工具を、ものづくりの先達国家である、ドイツの国際的に有名なデザイン賞が、こぞって認めたことが素晴らしいと思いました。サムスン、LGなどきらびやかな商品を、ドイツのデザイン賞にエントリーし、多くの受賞数を稼いでいますが、どっこい!この製品のように、デザインと一見縁遠い作業現場で使う工具のデザインを評価する心意気の高さを感じます。やはり、ものづくりを支える職人=マイスターが、高い社会的地位を持っている国なのだ!とつくづく思いました。やはり日本の職人は素晴らしい。デザインに目覚めています。

商い魂
ニシムラジグさんの素晴らしいところは、“ものづくり魂に果実を生みだす商い魂”なんです。これは当世風に言いますと、アメリカが先導する「オープン・イノベーション」を、すでに実践している好例なのです。クルーの今年のデザインテーマは「つなぐ」デザインであることは説明してきました。中心的課題は、「商いの段取りとものづくりの算段」で、あまりに優秀な商品にだけ目を奪われると、ニシムラジグさんのことを、見失ってしまいます。実は、これを同時に展開している会社なのです。

ものづくりの魂と商いの魂 1

2011年07月05日 08:00

私が日ごろから、技術の磨きこみだけでは“この国のものづくりが駄目になる”。と言い続けていることから、馬場は技術価値を安く見ていると誤解される向きがありそうです。そうではありません。私はむしろものづくりと技術が大好きです。しかし、立派な技術で創った良いものが、不当な価値で取り引きされること。オリジナルを創ったにもかかわらず、後から来た上手な商売で利益が横取りされること。本人がその価値をきちんと伝えていないこと。などなどが大嫌いなだけなのです。

ものづくり魂の結実
敬愛して止まない株式会社ニシムラジグの会長さんである西村明さんから、タップハンドルのセットが届けられました。

jig1.jpg

木製の箱に入った素晴らしい商品です。この商品は国際的に権威あるデザイン3賞に選定される栄誉を賜りました。私が知る限り、日本初の快挙だと思います。それも石川県は金沢市の小さな鉄工所が、営々と積み重ねてきた“ものづくり商い”の受賞です。つまり、“良いものづくり”と“良いビジネス”の両方を、ひたすら正直に継続した結果なのです。“我が意を得たり”と、自分のことのように喜んでいます。


2010年度
バーデン・ヴェルデンベルグ州国際デザイン賞受賞(シュツットガルト・デザインセンター主催)
2010年度
iFデザイン賞・金賞受賞(インダストリアル・デザイン・ハノーバー主崔)
2010年度
レッドドット・デザイン賞受賞(ノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンター主催)


今年は、日本が誇る「グッドデザイン賞」にもチャレンジしています。どんな評価を頂けるか?私も審査委員団の一人としてお迎えしますが、本当に結果が楽しみです。

この方の、ものづくりにかける情熱に、デザイナーとしていつも薫陶を受けています。この木箱には、日本語と英語で次のように記されています。

カタログに100という数字が入っていますが、これは通常使用時において「100年間の保障を致します」という意味です。作者 西村明 の熱き思いであり、また心意気でもあります。
タップハンドルセット「グリッパー」木箱に記された文章より

jig2.jpg

痺れます!(笑)この続きはまた次回、お楽しみに。