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デザインの「解放」神戸ものづくり塾 プレ講座 8

2017年01月19日 08:00

今日は「神戸ものづくり塾」の初日で、神戸市産業振興センターに来ています。
塾の様子はまた近々にご報告します。楽しみにしていてください。今回のブログは、昨日に引き続き、<「3×4」クロス・デザインマネジメント>ステップ1と2の「まとめ」を行います。

先日、こんなご質問を頂きました。

「我が社は、マーケットの売れ筋商品で方向性を参考にして、それと似ないようにオリジナルデザインをしていますが・・・中略・・・本当にオリジナルと言えるものづくりをするには、どのようにしたら良いのでしようか?」

前段の、「売れ筋商品を見て・・・」という言葉をサラっと聞き流せば、効率のいいマーケティングのような気がします。しかし、よく考えてみると、これはもの凄く危険なビジネスではないでしょうか?<「3×4」クロス・デザインマネジメント>では、一般的に普及している「企業環境分析」を止めよう!と提言しました。マーケットの売れ筋商品で方向性を参考にして・・・という行為は、まさに「分析型」の開発思考で、それは、「できるだけ既存商品に似ないように・・・」という、苦し紛れのスタイリングデザインに追い込んでしまいます。
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さらに、<「3×4」クロス・デザインマネジメント>では、商いの「三題小噺」を創作する「発想型」開発のすすめを提案していています。ブログでは二つのオリジナル事例を創って解説しました。

オリジナル商品を開発するために「新田知水」ビジネスを!

ご質問の後段「・・・本当にオリジナルと言えるものづくりを・・・」について、もう少し深く考えて行きましょう。それを現実化するのは「自社の強み(自社シーズ)」です。「なーんだ、そんなことは当たり前じゃないか」と言われるでしょうが、それがちょっと違うのです。ここで言う「自社シーズ」とは、今まで得た小さな「技術と知識」を深堀した、オリジナルの「自社の強み=知的資産」を指すのです。それを活用するのが「新田知水ビジネス」です。

1月10日のブログで発表した、紙器業の「三題小噺」は、「技術と知識の三段絞り」を行いオリジナルの「自社の強み」として定義したプロセスが見て取れます。
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自社の技術的強みを育てると・・・ 
我社は紙器業でどんな難しいパッケージでも製造できる・・で良いんですよね!
   ↓ 他の会社もそう言っているよ!そのココロは?
我社はどんな「対象物」でも要求通りの包み方を提案できる・・・と解釈したら?
   ↓ もっとオリジナリティーを!そのココロは?
我社は軽く丈夫な紙の特性を知っていて、包む、守る、運ぶ、見せるなど、その目的に応じて、紙のはたらきを引き最大現に出すことができる技術を持っている会社!でどうだ。
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自社の知識的な強みを育てると・・・
顧客は工業部品・製品からビジネス分野や食品業界まで幅広いさまざまな業界情報が入る・・・で良いんですよね!
   ↓ 他の会社もそう言っているよ!そのココロは?
お客さまのさまざまな紙器の使い方を知っていて、業界ごとの特性と独自の要求を先回りして答えることができる・・・と解釈したら?
   ↓ もっとオリジナリティーを!そのココロは
市場ごとにある独自要求を他の業界に流用したりすることで、お客さまが明確に注文できないことも、先回りして代替え案を提案できる知識を持っている会社!でどうだ。
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まとめ2「知的資産型デザイン」のすすめ

<「3×4」クロス・デザインマネジメント>が言いたかったこと、それは中小企業の「商いの構想」創りは、「ライバルも持っていそうな強み」の「表面なぞり」ではなく、「技術と知識の三段絞り」を行い、オリジナルな自社の強みを「発想」し育てることでした。

この「知的資産」やがて、「ノウハウ」や「営業秘密」として成長し「知的財産」になり、組織のみんなが使える財産となります。そして、ご質問にあったオリジナルの商品を開発する原動力になるはずです。いずれ機会をみて「知的資産型デザイン」のお話をしてみたいと思います。

■神戸の研修に興味のある方は下記へご相談ください
神戸市経済観光局 経済部 工業課
e-mail : kogyoka@office.city.kobe.lg.jp

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2015年度スタート!

2015年04月06日 13:02

会社、大学、行政の新年度がスタートしました。ご栄転、転勤、合併、新しい人生のスタート・・・さまざまなご挨拶を頂く季節です。デザインもブログも「有機ELシリーズ」をようやく終え、心機一転!スタートします。よろしくご愛読ください。

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2015年度 思考し実践するデザインフィールドは次の5つ

1 美しい色・形と良いサービスのデザイン
2 ハッとするデザインテーマとコンセプトのデザイン
3 新しいビジネスの価値を創る事業のデザイン
4 経営と市場が「共創」するブランドのデザイン
5 企業の枠を超えビジョンを共有し「新たな場」を創るデザイン

さあ、今年はどんな人とテーマに出会えるか?「元気な企業を創るデザイン」がスタートします。

今年のグッドデザイン大賞

2012年12月05日 14:24

11月26日に2012年度のグッドデザイン大賞が発表されました

日本放送協会・NHKのテレビ番組「デザインあ」です。
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子供番組ですが文句なく素晴らしい出来栄えで、プロもうならせる完成度。僕も思わず見入ってしまいます。デザインと言うテーマを子供向け番組で取り上げ、言ってみれば最も若いターゲットにデザイン教育を行うという意義のあるものです。これで、ことあるごとに「デザインは色や形のことだけではないんですよ」などと言わなくてもすむ時代になりますね。とは言ってもこの番組を見た子供たちが大人になる頃には、僕はもうその人とデザインの話をすることはない・・・間に合わないなぁー。

2004年、デザイン大賞はモノからソフトへ
僕は特別な意味を持ってこの結果を受け止めています。理由は、2004年グッドデザイン大賞に選ばれたのがNHK教育テレビ「ドレミノテレビ」「にほんごであそぼ」を思い出したからです。当時も審査委員の一人として、テレビ番組と言うソフトを大賞に選定する思い切った投票をしました。番組は「デザインあ」に勝るとも劣らない優れた出来栄えで、大人の鑑賞に堪える見事なものでした。しかし、もうひとつ大きな期待があったのです。それはNHK公共放送という保守の中核組織がデザイン大賞を受賞し、日本の隅々まで受賞のニュースを流しながら、デザインの本当の意味をしっかり報道してくれるはずだ!との皮算用でした。流石NHK、報道は実にクールで淡々と事実を伝えるのみでした。個人的な敗北でした(苦笑)。このときしっかり役割を果たしてくれたら、今、美大にいる学生の意識も変わったかもしれない。これなら僕との出会いが間に合った・・・はずです。

リベンジ
リベンジは僕の個人的思いです。さあ、今度はNHKさん!あなたが受賞したデザイン大賞の意味をきちんと受け止めて、これからの日本の産業、生活、社会の未来にとって、デザインがどれほど重要であるのか、2004年分の利息も含めて、しっかり報道すべきです!そうでないと、やっぱり前回のブログで「NHKあんたもかっ」と書いた内容は、NHKのデザインの無恥さを証明することになってしまう。・・・きっと近いうちに、デザイン特番をやってくれますよね。さすがわれらがNHKと言えることを信じて待っています。

日芸デザイン学科の1,2年諸君へ
普段は江古田で3、4年生と院生に講義をしていますが、先週1、2年生対象に「こらからが本当のデザイン時代だ」と言う特別講義をしました。多くの学生からレポートをもらっています。社会を対象としてデザインしなければ・・・と言う気付きのあったことが喜びです。読みながら感動しています。君たちにはなかなか会えないけれど、これからしばらくレポートの感想と質問にブログを使いながら答え、「こらからのデザインの話」をしようと思っています。これはきっと、学生と企業の双方をつなぎ、これからのデザインのあり方を考えてくれると思います。それにしてもNHKさん期待してますよ!

ぼちぼちデザイン話の再開です

NHKよ、あんたもかっ!

2012年10月29日 17:18

「みなさんデザインで選んでいる方が多いんですね」
朝の番組で、「最近流行の電気ケトルが転倒して、幼児が火傷する事故が頻発している」との特集の中での発言です。

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T-falより

瞬間に湯を沸かす比較的安価な電気ケトルは簡単な技術でできているために、人気が出るとあっと言う間に多くの企業が参入し、Q・C・Dの戦いの末、コモディティー化しました。普及期の商品だけにJISで安全基準を定める間もなく、転倒し熱湯がこぼれる事故が頻発しているとのこと。

そこで、マスコミ得意の誘導質問の出番です。電気ケトルを選ぶ理由を街角で聞いてみました。その結果は・・・

・デザインで選ぶ
・価格で選ぶ
・湯が早く湧きそうなイメージで選ぶ
・機能や性能で選ぶ

ただし、出勤前の多忙な時間でチラ見ですから正確性を欠いていますが、デザイン云々は確かです。

「みなさん、インテリに合わせてデザインで選ぶ方が圧倒的に多いんですねぇー」
「お湯が早く湧きそうなイメージで選ぶ理由の順位が高いですよ」

これはいけません。ハイハイする幼児の力で簡単に倒れるケトルは、まるでデザインを優先し安全性に配慮を欠いているような印象を残し、電気保温ポットのようにJISが整備されるまでは、使う側が智恵を発揮し上手に使うという、いかにもNHKらしい賢い消費者情報提供で結びます。これ自体はとてもいいことですが・・・。

しかし、何かがおかしい?
普通の生活者は、この情報を何も疑問に思いません。だって、"デザイン=スタイリング"と言う社会の暗黙知を前提としているからです。「いや、デザインは色と形のことじゃないんだ!」なんて反論できるわけがありません。
下手をすると、肝心の安全機能や性能をおろそかにして、売るためにデザインにかまけている商品が多いから、目先のデザインに目を奪われてはいけないよ!と伝えているように受け止められます。ここでも、機能と性能に対立するデザインと言う構造を前提として情報提供をしている姿が見えます。

これじゃいくら言っても・・・
日々、中小企業の経営者、商工行政等の方々、支援機関の人たちに、デザインは最中の皮じゃないですよ。機能、性能、心地よさ、使い勝手などなど、良い製品を構成するすべての要件を高度にまとめ、魅力的な商品に仕上げる考え方がデザインで、熱湯がこぼれるケトルは、デザインされていない商品なんですよ!と言っている傍から、ニコニコしながら、正しい報道機関であると信じ知識や見識を高めてくれるNHKが、親切に僕の努力に足払いをかけてくれています(苦笑)。

新しい商品は智恵が及ばない部分があって当然
電気ケトルなど新しい商品は智恵が及ばない部分があっても仕方がない。これは乱暴に聞こえるかもしれませんが、僕は当然だと思います。想定外(あまり使いたくない)の使い方がされ、人間の持っている注意力を発揮して道具を使いこなす、知識や工夫があって、新しい未熟な商品たちは完成度を高めて行きます。車やバイクはみんなそうでした。消費者があまりのも考えなくなり、一方的にものづくり側だけ攻めるのは問題です。その結果、どんどん開発者が委縮して、企業が面白味のない商品ばかり作るようになってしまいます。日本の車がつまらなくなっているのも、それが原因しているかもしれません。みなさん、もっと活き活きとしたモノづくりを応援するために、僕等も生活達人になって日本の意欲的なものづくりを応援しましょう!

生活達人になってモノづくりを元気にしよう
我田引水ですが、クラシックカーは、クルマの匂い、音、振動、熱、などなど、五感を研ぎすませ乗る楽しみを堪能させてくれます。多くに人はそれを「不便」と言います。いつかそんな道具とデザインと使い方について話をしてみたいと思います。

山形新幹線「つばさ」車中にて

リニューアル!プレミアム石川ブランド

2012年09月04日 11:16

8月29日に第一回「プレミアム石川ブランド」の表彰式に出席してきました。この賞は平成8年から続く「石川ブランド」の刷新を目指し、今年度から当該事業で選定されて商品の中で、特に秀でていて、ものづくりを先導し、石川県のブランドとしての価値を創造できる製品を選び、更に育成しようとする事業です。この賞は1機械 2情報
3繊維その他産業材 4食品 5伝統工芸品、生活雑貨、インテリアなどの5部門にわたり、僕は機械、情報、繊維その他素材の審査を担当しました。グッドデザイン賞はじめ他府県の審査はチームで審査をするのですが、この審査は一人で審査をしなければならず、緊張感をもって審査に挑みました。栄えある第一回目の受賞企業と商品を紹介します。

1.機械部門 株式会社ニシムラジグ グリッパー
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2.機械部門 東亜電機工業株式会社 マーキュリー
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東亜電機工業株式会社ウェブサイトより

3.情報部門 株式会社シーピーユー 建てもの燃費ナビ
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株式会社シーピーユーウェブサイトより

4.繊維その他産業材部門 オリケン株式会社 新織物「ネキーロ」
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オリケン株式会社ウェブサイトより

5.食品部門 株式会社宮本酒造 美酒のだし プレミアム300ml
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株式会社宮本酒造ウェブサイトより

6.食品部門 池田商店 金沢こんかこんか
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池田商店ウェブサイトより

7.伝統的工芸品・生活雑貨・インテリア等部門 天池合繊株式会社 天女の羽衣 ~手描き加賀友禅~
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天池合繊株式会社ウェブサイトより


8.伝統的工芸品・生活雑貨・インテリア等部門 株式会社朝日電機製作所「伝統工芸×IT」いしかわSPC
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伝統工芸王国ウェブサイトより

新たにマークも広く応募を募り、世界中から集まった意欲的な作品を審査させていただきました。選ばれたマークは石川の「石」を極めてシンプルに表し、抜いた空間はプレミアム商品が、石川の未来の扉を開く“希望に満ちた明日”を感じさせる見事なデザインでした。これから受賞企業さんと個別にブラッシュアップのお手伝いが始まります。折りを見て個々の商品の魅力をご紹介したいと思います。

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「平成24年度プレミアム石川ブランド製品認定証交付式、プレミアム石川ブランド シンボルマーク表彰について」より

否応なしの進化が起こっている
今年は新潟県のIDS審査に始まり、大阪市のデザインを活用した新事業審査、今だに続くグッドデザイン審査、そして10月に行われる予定の栃木県のTマーク審査など、多くのデザインの挑戦と対峙し真剣勝負を楽しんいます。今年は本当に大きく産業の行く末が変わる!デザインが変わる!と実感しました。これもグッドデザイン審査の結果が公表された後に、じっくりお伝えしたいと思います。