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モノづくりの魂と商いの魂 シリーズ2-3

2011年07月13日 12:00

『鈴仙』に私がすっかり惚れ込んだお話をします。それは、親しくなってから鈴仙の会社案内をデザインする仕事を依頼された時のことです。デザイン会社ならみんなそうするように、会社の沿革は勿論、鈴木社長の生い立ちや人となりをしっかりお聞きすることから始めました。CIを計画するのとまったく同じ手順です。

職人魂「リヒテルの鞄」の秘密
これには本当に驚きました!あの世界的なピアノ奏者「リヒテル」の楽譜鞄を再生したのが、日本人でそれも鈴仙だったのです。

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スヴャトスラフ・リヒテル

このお話を淡々とおごらず「やっちゃたんですよ」と、お話をされた鈴木さんに、はにかみ屋で粋な江戸っ子職人の気質を垣間見ました。
詳しい話は会社案内をご覧いただければわかりますが。ここで端折って説明します。

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左:馬場 右:鈴木社長

百年の時を超えた『鈴仙』鈴仙の心と技
世界中を飛び回る名ピアニスト「リヒテル」の傍らには、彼の分身ともいえる楽譜が収められた鞄がいつもよりそっていたのです。その鞄は、リヒテルのファンかスポンサーであったヨーロッパの貴族・・・貴族が!ですよ。彼の最高の演奏技術応えるべく、ご当地で最高の技術を誇る職人に命じ、誂えた当時最高の逸品だったのです。およそ世界一の職人でしょうね。天皇陛下御用達のようなものですよ!

しかし、いくら堅牢につくられた鞄でも、地球を何周も飛び回るうちに、くたびれてきます。彼はコンサートで訪れた国々で修理を依頼していたそうです。ただし、修理はコンサートの開園期間終了に合わせること!という条件です。それ以上に職人をビビらせたのは、世界最高の技術を駆使した職人技に、恐れをなしたことです。誰も手をだそうとしなかった・・・と言うのが事実でしょう。

さて、縁あって日本を訪れた「リヒテル」はたいした期待も抱かないで、主催者になんとかならないものだろうか?と相談したのでしょう。そこに我が鈴仙の登場です。映画のワンシーンのようですね。ここが出番!とばかり登場するのは俳優でしたら誰が相応しいでしょう?

その後の苦労の下りをお聞きすると・・・、「あーあ、男気出して受けるんじゃなかった!」というのが本音じゃなかったかな?(ただしこれは私の想像です(笑))しかし、見事、リヒテルの期待に応えたんですね。

やっぱりいいなあ―「ものづくりは!」話を聞くと文句なしに、スカッとします!ここにも「ものづくりの魂」が生きていました。

鈴仙カタログ
鈴仙カタログより一部抜粋 クリックすると大きくなります

つづく

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モノづくりの魂と商いの魂 シリーズ2-2

2011年07月12日 14:13

鈴木さんとのお付き合いはかれこれ二十数年にもなります。きっかけは埼玉デザインスクールの経営者セミナーでした。一発でデザインの本筋を理解した経営者でした。

もともと、デザインスクールはデザイン担当を育成することを目的に始めたのです。
            ↓
しかし、優秀な受講生ほど会社を辞める!その理由は?
            ↓
経営者がデザインに理解がない!だったら経営者のデザインスクールをやろう!
            ↓
その後、埼玉県の事業で、デザインを経営に有効活用する=デザインマネージメントの研究会が発足、それがサイシンフォーラムに発展。現在に至っています。

このころから、デザインをものづくりの算段だけに活用するのではなく、商いの段取り=経営にこそデザインという創造行為が必要!などと、鈴木さんと意気投合して、怖いもの知らずの活動を始めたんですね(苦笑)。それから、まあ、さまざまな事業を鈴木さんは始めます。私もお手伝いをします。

「あっ!そうか」ASOKAブランドのこと
埼玉県草加市の「草加せんべい」は全国に名前が知れているのですが、実は、皮革関連産業が集積している地域でもあるのです。それをまず知ってもらわないと話にならない!ということで、職人さんと勉強会を重ねた結果、地元の皮を使い、新商品開発をして、産地をアピールしようということになります。コンセプトモデルはFUROSKIです。

ASOKA 埼玉県草加市皮革
ASOKAカタログより ASOKA ホームページへ

商標はアソカASOKAです。人が何かに気づく時!思わず「あっ!そうか」って言いますね。職人さんたちも僕らも、この事業で様々な気付きがあって、その気持ちを素直に表そう・・・とうことで、あっ草加!=ASOKAになったんです(笑)。

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つづく




モノづくりの魂と商いの魂 シリーズ2-1

2011年07月11日 11:08

埼玉県は草加市に『鈴仙』という会社があります。爬虫類の皮革を扱わせたら日本一の技術をもった会社だと私は思っています。業界に「ワ二の鈴仙」と言わしめた会社です。

代表は鈴木功さんという方で、私とは、『サイシンフォーラム』(埼玉新産業ストラテジーフォーラム)という、デザインと経営を研究・実践する同士でもあります。

鈴仙「クロコのステーショナリーシリーズ」オンラインショップ

爬虫類には独特の魅力があります。その魅力に取りつかれた方が、縁あって鈴仙さんのホームページを発見し、訪ね、鈴木さんとインターネットを通じて、ご自身のイメージを伝えます。鈴木さんがそれに応え、やりとりの末、世界にたった一つの「クロコのステーショナリーシリーズ」を完成させるのです。このプロセスは、まさに、私が常日頃「市場デザイン」で唱えている、顧客との共創がブランドを生みだす「感動コミュニティーづくりのフレームワーク」を文字通り実践されている先駆者です。

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ワニの革で作ったワニのチャームもいいでしょ?(笑)

私も名刺入れとUSBメモリーケースで愛用させていただいています。名刺入れは使い込むほど色艶が増し、肌になじむ感触が得も言われない愛着を醸し出してきます。工業製品もこんな感性性能を埋め込み、「愛○○」に仕上げられれば・・・と言うのが私の研究課題でもあります。

また、明日から皮革のものづくりの話を進めていきます。お楽しみに!

ものづくりの魂と商いの魂 4

2011年07月08日 08:00

ニシムラさんシリーズに、とうとう今週いっぱいジャックされました。私自身が西村流「人たらし術」にすっかりはまったということです(笑)。お話を聞けば聞くほど、頭で学んだことの裏打ちをさせていただいていることを実感します。また折を見て工場の儲かる現場の秘密をご紹介します。

産業団体と公設研究機関の後押しがあった
最後にもう一つご紹介します。株式会社ニシムラジグさんは、社団法人石川県鉄工機電協会さんに所属しています。そこで行われる「デザイン研究会」に一生懸命、若い社員とともに受講され、厳しい私の指導にくらいついてきます(笑)。とにかく真剣なんです!それをしっかり受け止めるデザイン研究会は、アサヒ装設株式会社さんの山本社長が会長役でけん引されていて、私が知るなかでも中身の濃い活動をされているトップランナーです。

それより以前、県の工業技術センターや(財)石川県デザインセンターが主催する事業に参加し、そこでドイツの『スカラデザイン』と知り合うことで、現在の躍進に至っているわけです。ということは、石川県のデザイン振興機関が素晴らしい役割を果たしていることに、みなさん着目して欲しいと思います。地元の公設試験研究機関を一度訪ねて行ってみると良いですよ。きっと新しいチャンスの扉が開くかも知れません。

職人とタキシード
Tuxedo Shirt 6-10-08 -- IMG_0623 Manos de trabajo / Working Hands
Photo by PAWLUK IVAN

西村さん 「先生!来週家内と一緒にレッド・ドットの授賞式に行ってきます」
馬場   「それは、それはおめでとうございます。」
西村さん 「5日間でタキシードのレンタル料が五万円!高かった!」
馬場   「会長!お土産は晴れ舞台の写真をお願いしますね。」
西村さん 「それじゃ、行ってきます!」

作業着に赤いアポロキャップをきちんと被り、首にかかったタオルをとって、笑顔でお話をされた75歳の元気な姿が目に浮かびます。共にご苦労をされた奥様も同伴されるそうです。それを聞いてジンときました。ノーベル賞に匹敵します。

奥さまは留袖(色紋つき?)かな、会長さんはタキシードとブラックタイです。今頃は、レッド・ドットの晴れ舞台で、日本は金沢からやって来た職人さんが、切削油で黒ずみ小傷でいっぱいの、名誉ある働いた手を差し伸べて、ペーター・ゼーツ(今もセンター長だと思います)と、がっちり握手を交わしているでしょう。想像すると泣けてきそうです。どんなヒーローやヒロインよりも、輝いていて素敵だろうなぁーと・・・。

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左から: Scala Design designer Peter Theissさん/さとやま設計社 代表取締役 岩井 庸之介さん/株式会社ニシムラジグ  会長 西村 明/会長夫人/KEN OKUYAMA DESIGN CEO 奥山 清行さん


みなさん「やっぱりものづくりっていいですね!」この世界は、まだまだ捨てたもんじゃない!しみじみそう思いました。

デザインはもっと頑張れる!

ものづくりの魂と商いの魂 3

2011年07月07日 08:00

『グリッパー』でドイツの3賞を受賞したニシムラジグさんは、「商いの段取りとものづくりの算段」これを同時に展開している会社なのです。

2004年アメリカ発の「オープン・イノベーション」を標榜したパルサミーノレポートでは、欧米がNIEs/BRICsを取り込み、ジャパンナッシング作戦を展開してきました。顕著な実績を上げたのがインテルで、マザーボードを台湾に製造を託し、あっという間に半導体地図を塗り替えてしまった現実をご存じだと思います。

実はニシムラジグさんは、台湾企業としっかり握手をして、製品を世界中に販売しているのです。しかし、ただ任せるのではありません。インテルがMPUをPCIパスで秘匿し、プロトコール(公式手続き)と使い方のレシピを、チップに添えて提供していることと、全く同じようにやっているのです。しかし、それが日本人流。いや西村流です。

商いの肝は素早い普及と標準化
日本で一番欠けているのが速度感だと思います。いくらいい商品を開発しても、もたもたしていたら、あっという間にほかの国に漁夫の利をさらわれてしまいます。それを防ぐには、市場にいち早く流し世界のデファクトスタンダードになることが、市場で勝ち残る王道です・・・というのがオープン・イノベーションだということなのです。
小さな企業は特に分業と協業による市場づくりがキーワードなんですね。その点、台湾という国は素晴らしい力を発揮してくれるようです。ニシムラさんはそれをしっかりわかっていて、ドイツのデザイン、日本でのモノづくり、台湾での販売と、コラボレーションを実践しています。(デザインはドイツって所がちょっと悔しい(苦笑))

「防禦」は、精度の絶対的自信と義兄弟的つながり
『サミッター』という商品を以前ご紹介しました。
この商品も台湾から世界に普及を図っています。協業で小さな企業が不安になるのは、いつか真似をされるのではないか?ということです。

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株式会社 ニシムラ ジグ  会長 西村 明 氏
「わしゃ、そんなこと全く心配してません」と、にこにこしながら西村さんは言います。理由はコストに見合う精度が出せるのは自分のところだけという自信と事実。

それにもまして、西村流「人たらし術(失礼)」で、相手の懐に飛び込み、今では台湾企業経営者の葬儀に参列するなど、義兄弟のお付き合いをされています。台湾は日本以上に信義に厚い国なんですね。
欧米がNIEs/BRICsを取り込めたのは、留学生に対する親切な扱いです。日本人がかつて、孫文を支援したように、アジアの国として、本来すべきことなのだと、ここでも反省しきりです。    

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