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「解像度」を下げる

2023年12月07日 13:40

解像度は上げるだけが正解じゃない
最近、ビジネススパーソンの間で、 フワッとした曖昧な事象を明晰にすること を称し「解像度を上げる」という言葉が流行しています。そのための本も出版されています。それは、画素数を上げて精緻な画像を得る様に、さらっと見てわかったような気になりがちなビジネス課題を具象化してしっかり捉えようという例えだろうと思います。

「視る」と「見る」と「診る」
しかし、長い間デザイン活動やクリエイティブワークをしていると、 ボケた意識のメガネをかけて、意図的に「解像度を下げる」思考をしていることに気がつきました。その理由は、解像度を下げてデザイン対象を「視る」と、商品の外皮(色と形のデザイン)を突き抜け、そのモノの本質(何ために存在するのかという理由)に到達できるからです。これは「見る」と「診る」の違いで、ピントのあったメガネは表面を的確に「見る」ことできますが、レントゲンは焦点深度が深く中身を「視る」ことに適すのと同じような感覚かなと思っています。

「とちぎデザイン塾」では、解像度を下げてデザイン対象の根本的課題を発明することから始めます。解像度の高いメガネをかけて ちょっと良い改善アイデアを得るのではなく、解像度を下げて対象を透視し発想する 飛び抜けて良いアイデアを「着想」していくプロセスを体験していただきます。塾ではそれを「抽象度を上げる」「抽象化する」と呼んでいます。デザインのイロハのイは、とにかくアイデアを思いつくことで、それを「着想する」ために、解像度を下げる必要があるからです。

最初は、解像度を下げる→抽象度を上げる(見えないデザイン思考)
そうは言っても解像度を上げることは後半のデザインワークでとても重要です。それは「着想」に後に待つ「解決策作り」に手渡された フワッとした曖昧なアイデアを、色と形につなぐ具体化工程の思考なのです。

それを、解像度を上げる→具象度を上げる(見えるデザイン思考)
塾の主催者である栃木県ブログでは担当のイワブチさんが、「スティーラーズ株式会社」の事例が取り上げています。サスマタを見直し・改良されグッドデザイン賞2022を受賞した事例です。

sasumata.png
2022グッドデザイン賞サスマタ タックルPlus

2020年の塾を受講されたときも「抽象化」の講義を行い演習もしたと思います。具体的な名称(名詞)の「サスマタ」と呼ばずに、「暴力を行う人に対して身の安全を守りながら鎮める」などと抽象化して動詞的に表ことをお勧めしました。「サスマタ」と言ってしまうと目に見えるサスマタから離れられず、改善提案しか思い浮かびませんが、事例のように動詞を加えた短文で表すと、今までのサスマタと全く異なるサスマタアイデアが「着想」されます。イワブチさんのブログにもあるように、DRDでサスマタの新たな価値を発想することもできます。

このように、モノを見る意識と姿勢を変えてくれるだけでも、「とちぎデザイン塾」に大きな価値があります。12月15日は、解像度を下げて抽象度を上げ、「あっ!こんな考えがあったか!」と、人生を変えてくれる体験が始まります。皆さんとお会いできることを楽しみに待っています。

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再開

2023年11月30日 14:02

2018年2月以降、5年10ヶ月の空白を置き「元気な企業を創るデザイン」ブログの再開です。

この間、みなさんと同じように私とクルーにも様々なことが起こり、社会も大きく変容しました。デザイン界での大きなトピックは、経済産業省が「デザイン経営」宣言を発したことです。このブログコンセプトの「デザインの解放による元気な企業づくり」にとって嬉しい宣言でした。このことはまたの機会で詳しくお話をさせていただくことして・・・

ブログ再開にあたり、身近で具体的なニュースからお伝えします。
12月15日から来年の3月まで、栃木県産業労働観光部が主催する「とちぎデザイン塾」に出講します。10年以上の歴史があるデザイン塾で、今まで様々なテーマで開催されています。こちらをご覧ください。

参考リンク:とちぎデザイン塾2023「DRD商品デザイン塾」の参加者募集について


デザイン塾のテーマは、フダンとイザを両立させる『DRD』 double roll design ダブルロールデザインです。参加企業は栃木県の中小企業に限られますが、本ブログを通じてDRDについて知り何か活動のキッカケになれば幸いです。概要は株式会社クルーのウェブサイトをご覧ください。

参考リンク:株式会社クルー ダブルロールデザイン研究所


今年度のデザインテーマは、「フダ」と「イザ」のダブルシチュエーションを、苦もなく乗り切る「はたらき」を込めたプロダクトのデザイン構想です。
DRDcrew.png

・「フダン」使う商品に「イザ」に対応するはたらきを仕込んでおく。
・「イザ」でしか使わない商品に「フダン」使えるようなはたらきを備える。

グッドデザイン賞で参考になる商品を見つけましたのでご覧くだい。

参考リンク:グッドデザイン探訪「好き」をかたちにする(前編)


(上記リンクより引用)

私は防災グッズが好きなので、どんなものでも買ってきました。でも、私の友達は、防災には興味がないので、「なぜ買わなきゃいけないの」、「いつ使うかわからない備えのために、なぜお金を出さなきゃいけないの」、「そもそも、かさばる防災グッズをどこにしまっておくの」と、不満を口にします。つまり、課題がいろいろあることに気付いたのです。


イザしか使わない防災用の寝袋をフダン使うクッションに仕立てたデザイン事例です。何を開発したらいいのかテーマが見つからない!そんな企業にとってDRDは、切実なデザインテーマを手に入れることができる。とても良い機会です。参加者はデザイナーに限りません。良い商品を創りたいと思う方なら誰でも大歓迎です。

参考リンク:とちぎデザイン塾2023「DRD商品デザイン塾」の参加者募集について

「モ・コ」と「ナガレ」の効果のほどは?

2018年02月06日 16:06

今日は神戸で初めて実施した「3×4」の開発3要素「ヒト・モノ・バ」をリ・ニューアルした「モ・コ」と「ナガレ」の効果のほどをご案内します。

元気ブログ読者のみなさんは、21017神戸ものづくりイノベーション研修「ケミカルシューズがつくる神戸の○○な暮らしデザイン」についてはご承知だと思います。生活を一変させるイノベーションのためには、優れた製品開発だけでは“そこに”届かないために、モノがつくるコト=体験の「モ・コ」開発と、「モ・コ」と出会う感動バの体験=「ナガレ」開発が欠かせないことが前程です。

下図は、モノにコトを添えた「モ・コ」構想と、買われて行くミチスジを発想する「ナガレ」構想を表しています。
hitomokonagare.jpg
“位置情報がとれる靴”というGPS機能がついたシューズ「モノ」の発想がでました工業化社会の商品開発であれば、ものづくり(製造業)が主導する製品開発から入る順番で合格です。後は、さらにどんな靴の構造で、どんな機能を持たせて・・・と、機能開発となりますが、これではイノベーションがおきにくいので、この研修ではモノの開発は後回し、「モ・コ」開発と「ナガレ」開発のセット構想を最初にやってもらいます、

こんな具合です。

→GPSシューズが創る「コト」開発とは?
・・・神戸に土地勘のないゲストでも、特別な準備をせずに遊び(仕事)来ても、ストレスなく神戸を隅々まで楽しめる「GPS情報を活かした体験型観光事業」を構想しよう!

※イノベーションは、こんな「体験型観光事業」を起こしたいから、「GPSシューズ」というデバイスをを開発するのだ!という発想の順番が起こし易い!

→GPSシューズの売り場開発とは?
・・・間違っても、販売を靴売り場に任せる!などと既存流通に頼る考えは止めて、コトの価値をさらに向上させ買われて行く「ナガレ」を開発しよう!
・・・対象者が神戸に出入りするあらゆるポイント(関所=駅・港・空港・街の入口・案内所)に置いて、ご利益を紹介し自然に使いたくなる「流通販売のミチスジ」を構想する。

その結果、ケミカルシューズ製造と卸売りと小売りを縛る鎖を断ち切り、「楽しく神戸を闊歩することを応援する産業」が生まれるのです。これは地域や小さな企業でもできる!見事なイノベーションではないでしょうか?

20180126_003.jpg

結果、GPSシューズという「モノ」が内在するはたらきを十二分に活用することで、新たな使用体験という「コト」と、新規流通販売事業を一体化した「ビジネスモデル」をデザインすることとなります。それは、シューズという製品意匠をデザインする名詞デザインから、製品が生み出す素敵な体験と買われて行く道筋を創造する「動詞デザイン」への大転換です。

この思考に転換できない人の共通項は!ブレイクスルー時点で、「できるだろうか・・・?」を先に考える生真面目さです。うまく行く人は、「現実化だって?そんなものは後から考えれば良いさ」・・・などとどれだけ「ぶっとんだ発想」ができるか!に集中できる人です。現実化は後からブレイクダウンすれば良い。他人事のように無責任さを持つことです。

とりあえず実験は成功!・・・かな?

手描きのイノベーション構想(妄想)「イロハのイ」

2018年01月25日 12:21

みなさんは商品や事業開発の、最初の一手をどんなふうに「描き」始めますか?

今日は馬場が日常的に行っている企画の「イロハのイ」を開陳します。それは手描きの妄想図です。興に乗って書いた文字は学生から「先生、板書が判読不能です!」と言われます。しかし、弊社のスタッフは書いた私でも分からない文字を解読してくれます。それは文字の解読というより、情報の全体像を画像で認識するというイメージです。速読で用いるフォトリーディング技法のようなものかもしれませんね。

前回ブログでアップした、「3×4」の新しい開発3要素=「ヒト」「モ・コ」「ナガレ」を使って、試しに神戸の研修事業の妄想素材を20分で描いてみました。描いてみて「モノ」→「モ・コ」と「バ」→「ナガレ」の変更は、ダイナミックな発想を助けてくれるという印象を持ちましたよ。結構行けます(笑)。

genki8_mousou.png
クリックで大きくなります

受け止めるフレームさえしっかりしていれば、矛盾する中身をとりあえず吐き出しても心配は有りません。構想を阻害するのは「整理された中身にしよう」とするあまり、発想を萎縮させてしまうことです。妄想は構想の立派な下敷きです。だから情熱で突っ走ってもいいのです。ただし!冷静さ取り戻し実現可能な構想にする手順が必用です。

妄想を暴走させる→外に見える化する→冷静に実現可能な構想に仕立てる

そんな時には手書きがベスト!PCを使って作業をすると、創作中に邪念(過去の成功や失敗そして他社の動向、上司やクライアントの評価)が入り、思考の速度に表現が追いついて行かず、出来上がった図版は綺麗なものの、あれっ、こんな優等生の誰でも知っていることを書きたかったんだっけ?」となってしまいます。これを上手くやる秘訣は、「勢い」です。筆に墨をタップリ含ませて、一気に思いを白い紙に注ぎ込む書道のようなものですね。これをワードや特にアタマの硬いエクセルなんかでやってしまっては、元も子もありません。

ともあれ神戸のみなさん!明日のブレイクスルーに向かい、十分な妄想と構想を繰り返しましたか?
■「ヒト」のリアルなインサイトに迫ることができていますか?
■「モノとコト」が相乗効果を生む「ご利益」の発想ができていますか?
■地元企業と地域の力で新しいビジネスの「ナガレ」を構想できていますか?

見たことも聞いたことない新しい事象を構想した!本当にできるの?これってヤバいんじゃない?など物議を醸す構想をした!でも、大丈夫、そんな不安を払拭し現実化できる手の内がある!この3つをご一緒に確認しながら創作して行きましょう!!

ブレイクスルーとブレイクダウンの「アイダ・間」

2018年01月18日 17:05

ブレイクスルーとブレイクダウンの「アイダ・間」に何かあるでしょ?

ブレイクスルーでカフェになるタンブラーを発想し、ブレイクダウンでスター、サポート、アイドルという3つの具体的アイデアに現実化する。(過去記事参照

「なるほど!突拍子もないぶっ飛んだブレイクスルーと思ったけど、ちゃんと現実の商品案になるんだ!」

と納得されたと思います。しかし!それじゃ、スルーとダウンの「間」はどうなっているんだろ!?きっと「知りたいさん」「教えてさん」は疑問に思っていますよね(笑)。そこは、日藝をはじめ栃木や神戸の研修で手法を明らかにしていて、みんな辛い(笑)演習を重ね、雲間から抜けて青空を仰ぐ「爽快感」を味わっていただいているんですよ。でも特別にちょっとだけ中身を開いて教えします。

image6.jpeg

それはこんな具合・・・ブレイクスルーはこうでした。

職場の休憩時間をたちまちお気に入り「カフェ空間」にしてくれるタンブラー
ここでいうブレイクスルーの肝は?そうですね “お気に入り「カフェ空間」” です。対象者にとってのカフェとは、どうなっていると良いの?と問い掛けましょう。

■カフェって、その日の気分で好きな飲み物や食べ物を注文できる・・・。
→そうか!マイタンブラーだから好きなものを自分で仕込み持って行けば良いんだ!
■カフェの楽しさは・・・飲みものにあったカップや食器で提供されるよね・・・。
→そうか!肉薄や肉厚のカップや径の異なるカップで味が変わるぞ。わかったTap(飲み口)チェンジで行けるぞ!
■カフェには独特(ハーブやコーヒー)の良い香りが漂っていて自宅とは違う・・・。
→そうか!タンブラーやコンビニコーヒーの味気ないのは、香りが立たないからだ!香り専用の窓を付ければ良いのか!

如何ですか!「特別な魔法」は何もないでしょう!?

魔法があるとしたら、日頃の観察力と、見知ったことを記憶にと止め、必用な時に引き出せる、自分なりの引き出しや紐付けができること!たったこれだけです。

でも、もう一つ「秘密の奥義」があるのです(笑)

それは、クルーの開発OS<「3×4」クロス・デザインマネジメント>に組み込まれた、アプリケーション。ブレイクスルー&ブレイクダウンテキストとワークシートです。

btbdworksheat.jpg

さあ、神戸のみなさん!ご準備はよろしいですか?